囲碁棋士の渋川春海は,天文の知識を買われ,幕府の新しい暦作りの命を受けるが失敗。傷心の春海に算術の挑戦が突きつけられた。
「天地明察ですか」
春海は思わずそう繰り返した。北極星によって緯度を測るこの事業にふさわしい言葉だった。いや,地にあって日月星を見上げるしかない人間にとっては,天体観測と地理測量こそが,天と地を結ぶ目に見えぬ道であり,人間が天に触れ得るゆいいつのすべであるのだ。そう高らかに告げているように聞こえた。
(上252ページより)
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