放課後の理科実験室からガラスの割れる音がした。割れた試験管から漂うラベンダーの匂い。この匂いには,何かだいじな思い出がある――時間と空間を巡る奇妙な事件,そして淡い恋を描くSF小説。
それは,すばらしいかおりだった。和子はそのにおいがなんなのか,ぼんやりと記憶しているように思った。――なんだったかしら? このにおいをわたしは知っている。――甘く,なつかしいかおり……。いつか,どこかで,わたしはこのにおいを……。
(12ページより)
- テーマ・ジャンル
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日本の物語
SF・ファンタジー
友達・恋
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フリーアナウンサー山根聖美
いわずと知れたSF小説ですが、筒井康隆さんの文章は天才的な「リズム感」に溢れていると思っており、どの作品もスルリと引きこまれる魅力があります。