最初の動物は,単細胞生物が集まり多細胞化することで,群体となって生活する無胚葉生物だと考えられている。その後,まだ真の組織はもたず,体内の水路を流れる物質をとらえて食べる「海綿動物」が誕生する。やがて,塊状の細胞に分業が生じ,内側の消化をつかさどる組織や,体表を構成する組織が誕生する。袋の口から獲物を取り入れ,消化した残渣を排出できる二胚葉生物の「刺胞動物」,「有櫛動物」が誕生する。
もっと詳しく※東京書籍 高等学校理科用教科書「生物」より引用
動物
動物は,多細胞で,運動性のある従属栄養生物である。単細胞である原生動物(原生生物の一群)に対して後生動物と呼ばれる場合もある。動物は約30の門に分類されるが,最近になって新しい門に属する動物の発見もあり,研究が進むとさらに増える可能性が高い。分子系統学的解析により,単細胞生物のえり鞭毛虫類(原生生物の一群)と最も近縁であると推定されている。えり鞭毛虫類は,形態的には海綿動物のえり細胞に類似している。
動物の世界
海綿動物
海綿動物は器官が未分化で神経や筋肉がない。体形は不規則なものが多く,体は微小な骨片と数種類の細胞からなる。
刺胞動物
水中生活を行う。浮遊性のクラゲ,固着性のヒドラやイソギンチャク,サンゴなど。多くのものは一生の間に浮遊生活と固着生活の両方を行う。
軟体動物
石灰質の貝殻をもつものが多い。「あし」のはたらきをする軟らかな筋肉や内臓を覆う外とう膜などをもつ。イカ,カタツムリなど。
扁形動物
肛門がなく,排泄物は口から出される。水生または寄生性の生物である。プラナリア,サナダムシなど。
環形動物
体が細長く,多数の体節をもつ。各体節には排泄器官がある。ゴカイ,ミミズなど。
線形動物
体は小形で左右対称であり,体節はない。センチュウ,カイチュウなど。
節足動物
節のある肢をもつ。体には形の異なる体節があり,体表はうすい殻でできた外骨格になっている。地球上で最も分化した生物群の1つである。水生の甲殻類,陸生では3対の肢をもつ昆虫類や4対の肢をもつクモ類など。
棘皮動物
基本的な体形が5方向の放射状をとる海産動物。ヒトデ,ウニなど。
原索動物
海産動物で,固着生活をするものと,遊泳するものがある。一生のうち少なくとも幼生せきさく期に脊索と呼ばれる構造をもつ。ホヤ,ナメクジなど。
脊椎動物[新口動物]
背骨をもち,中枢神経を発達させている。脊椎動物は原索動物から進化してきた動物群であり,発生過程で脊索,鰓あな,神経管が生じることが共通している。水中生活をする魚類,水中と陸上の両方を生活の場とする両生類,おもに陸上を生活の場とするハチュウ類,鳥類,哺乳類が脊椎動物に属する。
魚類
四肢をもたず水中生活をし,鰓で呼吸する。1心房1心室の心臓をもつ。ヤツメウナギが属する無顎類は,ふつうの魚類がもつ上下に開く顎骨や,胸びれ,腹びれなどがない。サメやエイなどの軟骨魚類は,骨格が軟骨でできていて,硬骨組織がない。硬骨魚類は骨格の大部分が硬骨でできている。硬骨魚類は,条鰭類と肉鰭類に分けられる。条鰭類は,大部分の硬骨魚類が属するなかまで,ひれには肉質の部分がない。肉鰭類はひれに肉質の部分があり,シーラカンスや肺魚のなかまが属する。
両生類
成体は四肢をもつ。幼生は水中生活をし,鰓で呼吸をする。成体への変態のあと,肺と皮膚で呼吸し,陸上生活が可能になる。2心房1心室の心臓をもつ。卵は硬い殻をもたず,水中で発生する。カエルやサンショウウオ,イモリなどが属する。
ハチュウ類
四肢をもち,体温が外界の温度に応じて変化する変温動物である。陸上で産卵し,卵は硬い殻をもつ。2心房1心室の心臓をもつ。カメ,トカゲ,ヘビ,ワニなどが属する。
哺乳類
体毛をもち体温はほぼ一定で心臓は2心房2心室である。
単孔類(カモノハシ)を除き,子を出産し,雌が乳を出して子育てをする。
有袋類では,子は未発達のまま数cmの大きさで産み出され,母親の腹部の袋の中で育つ。
鳥類
前肢が翼になり,体が羽毛で覆われている。体温が一定の恒温動物で心臓は2心房2心室であるが,同じ特徴をもつ哺乳類とは近縁ではなく,ワニや恐竜などのハチュウ類の1群から進化したことが骨の形態や分子系統解析から明らかになっている。