ウミユスリカの幼虫ようちゅうは海(しおだまり)で育ち,成虫せいちゅうになるときわめて短い時間(30分~1時間ほど陸上りくじょうに出て交尾こうび産卵さんらんをし,そのまま一生を終える。動物のやく75%をめ,陸上りくじょう覇者はしゃともいわれる昆虫こんちゅう。しかし,ウミユスリカやウミアメンボなど,ごくわずかなれいのぞいて海には進出していない。

もっと詳しく

外洋に生きるウミアメンボ

ツヤウミアメンボの2齢幼虫

地球上でもっと繁栄はんえいしている生物は何でしょうか? 昆虫こんちゅうです。種数しゅすうの多さでも様々さまざま環境かんきょう適応てきおうしている点でも他の生物を圧倒あっとうしています。記載きさいされている昆虫こんちゅう総種数そうしゅすうやく95万種まんしゅであり、この数は地球上の全生物の種数しゅすうの半分以上いじょうめます。昆虫こんちゅうは、南極なんきょくやヒマラヤ高地などの極寒ごっかんの地にも赤道直下の熱帯ねったいにも生息しています。

ツヤウミアメンボの雄成虫

川にも砂漠さばくにも住んでいます。
しかし、昆虫こんちゅう不得意ふとくいとする環境かんきょうがあります。海洋です。地球の表面積ひょうめんせきやく70%は海洋であるにもかかわらず、海に生息する昆虫こんちゅうはわずかで、そのほとんどが潮間帯ちょうかんたいに住んでいます。
外洋に生息する昆虫こんちゅうはアメンボ科ウミアメンボ(Halobates)ぞくの5しゅしかいません。りくでは圧倒あっとうてき繁栄はんえいほこ昆虫こんちゅうがなぜ海に生息域せいそくいき拡大かくだいできなかったのか、海洋性昆虫かいようせいこんちゅうたちがいかなる経路けいろで海洋環境かんきょうに進出し、どのように生きているのかはきわめて興味深きょうみぶかい問題です。

著者: 井川輝美(盛岡大学文学部)